毎年、サンフランシスコで開催されているセールスフォース・ドットコム社主催のDreamforceが、2017年も11月に開催されました。アサインナビも視察のため参加してまいりましたので、Dreamforce’17 の内容をレポートします。「トレイルブレイザーの紹介」「マーク・ベニオフのスピーチ」「3つのカスタマーサクセスストーリー」といった3部構成に沿ってご紹介いたします。
Dreamforceとは
Dreamforceはセールスフォース・ドットコム社が主催する年に一度のイベントで、約17万人が集う、一企業が実施するイベントとしては世界最大規模のビッグイベントです。15回目となる今回(2017年)は、11月6日(月)~9日(木)までの4日間開催されました。
メイン会場は「Dream Valley」と名付けられたモスコーニセンター近辺で、周辺のホテルも会場となり、まさに街中がセールスフォース一色。
参加者層は、セールスフォースを利用しているユーザーもいれば、パートナー企業の担当者(経営層・営業・エンジニア)、情報収集のための企業、フリーランス・・・と、実に多種多様。サンフランシスコ市内で開催されるイベントとしても最大規模で、街中での認知度も高いと感じられました。入国チェックの担当者からタクシーの運転手まで、みなさんDreamforceのことをよくご存知でした。
肝心の内容はというと、13のキーノートスピーチに加え3,000以上のセッションがあり、参加者はこの4日間、非常に密で有益な時間を過ごすことになります。初日のマーク・ベニオフCEOのキーノートスピーチに始まり、その後は大きく、「トレイルブレイザーの紹介」「マーク・ベニオフのスピーチ」「3つのカスタマーサクセスストーリー」という流れの3部構成となっていました。それぞれ見てみましょう。
DreamForce 2017 トレイルブレイザーの取組
トレイルブレイザーとは、セールスフォース社にとって、非常に重要なキーワードです。
直訳するとTrailBlazer=先駆者という意味ですが、セールスフォース社にとっては、Salesforceを活用して新たなチャレンジを成功させる人々のことを指しており、ユーザー企業だったりユーザー個人だったりします。
セッションでは、ガールスカウトの事例が紹介されました。実は、ガールスカウトはSalesforceを活用してデジタルトランスフォーメーションを成功させている組織で、少女たちの教育や社会での成功をサポートしています。なんと16歳の少女が、Salesforceを使ってプロダクトを作成しているというのです。
また、この事例は「女性の教育や社会進出」というのが重要な意味を持っています。
Dreamforceでは、「Equality」をテーマにしたセッションも多く、平等な教育と雇用が掲げられていました。女性の教育や社会進出もサポートしているところが、なんともセールスフォースらしい取り組みだと言えます。
DreamForce 2017「マーク・ベニオフのスピーチ」
カスタマーやパートナーの方々への感謝の言葉に加えて、第4次産業革命にどう向き合っていくか?というテーマでの話が中心でした。
1700年台は蒸気機関による生産、1800年台は電気機械による大量生産、1990年台はコンピュータによる自動生産、そして今は、インテリジェンスによる産業革命だと続きます。AIやIoTといった次世代テクノロジーが、この革命の中心にいます。例えばエレベータ自体が話し、故障予測をするコネクテッド・エレベーター。第4次産業革命によって、モノやサービスの背後にいる「お客様」とのつながりが更に強くなる、という未来をマーク・ベニオフは語りました。
第4次産業革命で皆が感じる不安についても、マーク・ベニオフは触れています。
次世代テクノロジーは、私達を結びつけているのか?それとも分割するのか?つながりが多くなるのか?少なくなるのか?そういった不安から抜け出すためにも、Dreamforceで多くのトレイルブレイザーから刺激を受けることが必要だと話しました。
また、Equalityについても熱弁をふるっていました。
セールスフォース・ドットコムは、1-1-1モデルという、株式の1%・利益の1%・社員の時間の1%を社会貢献に費やすという活動を続けています。
設立当初から続けているこの活動に3,000社が賛同し、同じような活動を広げています。この活動の根底には、 Equality、特に女性や子供たち、非営利団体の成功も支援するというビジョンがあります。
セールスフォースでは、トレイルヘッドという無料のeラーニングを提供していますが、先のガールスカウトの例だけでなく、多くの人に教育の機会を提供しているサービスともいえるでしょう。また、昨年アインシュタインというAIを発表し、今年は各ソリューションにアインシュタインを組み込んだ新サービスが発表されましたが、これも人々がテクノロジーを身近に扱うための取り組みと言うこともできます。
DreamForce 2017「3つのカスタマーサクセスストーリー」
成功をおさめたトレイルブレイザーとして、T-Mobile・アディダス・21世紀フォックスのストーリーがシェアされました。
T-Mobileは、ドイツが本社の携帯通信企業ですが、売上予測にアインシュタインを活用し、将来の見込みや売上が落ち込みそうな兆しを分析したり、しかもその原因までスコアリングしたりという機能を、誰もが使えるようになっているといいます。「社員が皆データサイエンティストになったようなもの」と語っていました。
アディダスでは、DMPを中心とした1 to 1マーケティングのサクセスストーリーが話されました。
アディダスのNo1店舗はドットコム(eコマースショップ)だとし、アディダスに興味を持った人へのDMP広告や、チャットボットでのリアルタイムコミュニケーションを実現しているようです。
21世紀フォックスは、セールスフォースプラットフォームで数千の映画コンテンツを管理しています。中でも、最も効果的なマーケティング資料である映画の予告編データをもとに、アインシュタインを活用して興行成績予測を出しています。
マーク・ベニオフCEOは、「テクノロジーの進歩は想像を絶するものがある。我々の生活の質を上げることができるし、下げることもできる。テクノロジーが良いか悪いかではなく、テクノロジーを活用して何ができるか、ということ。皆さんがこれから先どのような道を歩むのか、どのような世界を見せてくれるのか、それを考えると、とてもワクワクする。」と締めくくりました。
イベント期間中は、ベニオフ自らあちこち散策していたようで、一般参加者と混じって意見交換をしているシーンも見かけたのが印象的でした。ベニオフ自身が、Dreamforceのことを「ユーザーの声に耳を傾ける素晴らしい場」と話していたとおりのことを実行していました。まさにカスタマー中心の経営をしているセールスフォース・ドットコムに、これからも注目です。