下流行程でデスマーチにならないためのヒアリング手法/エンジニア

RFPという言葉をご存じでしょうか?RFPとは実際のシステム開発に関する請負契約に先立って、顧客から求められる提案依頼書のことです。今回はこのRFPがデスマーチの根源となった事例と、RFP作成のためのヒアリング手法を合わせて紹介していきます。

デスマーチ事例:受け入れ検証時に発覚したRFPとの違い

システム開発を請け負うSIerのY社は、ある日新規顧客である流通サービス業Z社より、RFPを受け取ります。

RFPとは日本語で「提案依頼書」のことを指し、簡単に言えば「自社でこういうシステムを実現したいのだけれど、何か良い方法はないか」という、システムに対する情報の提供を依頼する書面のことです。
SIerとしては新規顧客からRFPは喜ばしいことであり、自社製品や技術力、ノウハウに多少の「色」をつけて返信してしまいます。
RFPを受け取ったZ社は、Y社からのRFPを見て請負契約の締結を決定。要件定義はRFPをもとにPMや営業担当だけで進められ、早々に実際の開発作業がスタートします。

しかし実際にシステム開発を進めるのは、要件定義やRFPの内容をよく把握していないエンジニアたち。
概要設計時から少しずつズレが生じ始め、実際にシステムをつくりあげたあとのZ社による受け入れ検証時には、重大な要件の齟齬が発覚してしまったのです。
「請負契約」とは、少し極端な言い方をすると、顧客が求めるものを実現するための方法は「お任せ」という契約形態。裏を返せば「どんなことをしても絶対に実現しなければいけない」という厳しい契約です。

結果、Y社は大幅な仕様変更と修正作業を求められ、概要設計フェーズから再度やり直しという厳しいペナルティを負うことになります。
当然のように開発現場はデスマーチと化し、裁判沙汰は何とか回避できたものの、エンジニアもY社も疲弊してしまったのです。

デスマーチを回避!RFP作成には徹底したヒアリングが必須

ヒアリング

今回の事例でポイントになるのは、Z社からのRFPに極めて安易に回答し、その内容について詳細なヒアリングを実施できなかったことです。
RFP作成におけるヒアリングでは、インタビュー方式が有効で、これには事前の準備が必要になります。
特に大切になるのが、インタビュアーの人選、顧客に関する手元資料、インタビューを実施するための環境です。

新規顧客であれば、SIer側も顧客の情報が足りず、まずはここを埋めるためのヒアリングとしてインタビューを行うべきでしょう。
顧客が置かれている状況や背景を把握し、その上でシステムを使って実現したいことを理解するべきです。
インタビュアーは何もシステムに詳しい人間でなければいけないということはありません。
熟練の営業担当者やコンサルタント、PMなどが主体となり、技術的な補足要員としてエンジニアが同行すれば良いのです。
また、インタビューの場はできるだけリラックスしてフランクな雰囲気になるよう心掛けることも大切。
ビジネス的な建前に終始せず、雑談などを交えていきましょう。

デスマーチを起こさないために!クライアントの本音を引き出す「アクティブ・リスニング」

ヒアリング・インタビューの手法の一つ「アクティブ・リスニング」。
アクティブ・リスニングとは、日本語にすると「積極的傾聴」といわれます。
相手がどんどん情報を出しやすいよう、相槌とうなずきを積極的に活用しつつ、決して否定や横やりを挟まない方法です。

カウンセリングの現場でも使われるこの手法。
話し手の言葉を反射的に聞き手に返し、本当に言いたいことが何なのかを反芻することで、より正確な言葉で自己表現できるように誘導する技法です。

このアクティブ・リスニングを実施することにより、書類に書いてある以上の情報をクライアントから引き出すことができる場合もあるため、まずは直接話す機会を持ち、本当のニーズは何なのかを把握できるようになりましょう。

明確な要求がわかれば、デスマーチを回避できる可能性は格段に高まります。

クローズド・クエスチョンとオープン・クエスチョンで情報の精度を上げる

オープン・クローズ

ヒアリングには、クローズド・クエスチョン/オープン・クエスチョンによる具体性も大切です。
クローズド・クエスチョンは、相手が択一でこたえられるような質問方法です。「はい/いいえ」や「1か2か」等、選択肢を提示して答えてもらいます。
一方、オープン・クエスチョンは、「どうだった?」というように、相手に自由に答えてもらう質問です。

クローズド・クエスチョンはより明確に相手の考えや事実を確認することができ、オープン・クエスチョンはより多くの情報を得ることができます。

より多くの情報を得るためにオープン・クエスチョンを使いたいところですが、ビジネス上の付き合いでは核心を的確に話してもらうのは難しい場合も多いはず。
そんな時には、クローズド・クエスチョンからスタートする方が、より明確に確認することが可能です。
アクティブ・リスニングで得た情報をもとに、クローズド・クエスチョンからオープン・クエスチョンへと使い分けましょう。
まずはアクティブ・リスニングである程度の情報量を確保し、その後クローズド・クエスチョンとオープン・クエスチョンを使い情報の精度を高めていくというイメージを持つとスムーズに進みやすいと言えます。

RFP作成時に実施するヒアリング・インタビューにおいてこの2つを心がければ、誇張や齟齬を取り除いた前提にたどり着くことができ、後々のデスマーチ化を防止するために役立つのではないでしょうか。

デスマーチについては、過去にヒアリングの重要性デスマーチをなくす仕事術でも取り上げています。合わせて参考にしてみて下さい!

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