システム開発を委託するとき、委託会社と受託会社との関係性によっては「下請法」が適用されることがあります。下請法が適用されると、委託側の親事業者にいろいろな義務が課されますし、禁止行為もあります。違反すると罰則もあるので、注意が必要です。そこで今回は、システム開発における下請法の重要ポイントを元弁護士の筆者がご説明します。
下請法が適用される場合
下請法は、正式名称を「下請代金支払遅延等防止法」と言います。
これは、下請け企業が親事業者に比べ、不利な立場になりがちになるため、その力関係を是正するために設けられた法律です。
IT業界でも、下請法が適用されるシーンはとても多いです。
たとえば、ソフトウェアの開発や保守契約、ユーザーサポート契約などでも、下請法が適用される可能性があります。
ただ、どのようなケースでも下請法が適用されるわけではなく、親事業者と下請け事業者の一定の資本金の差があることが必要です。
プログラム作成業務の場合
この場合、以下の2つのケースで下請法が適用されます。
それ以外の業務
プログラム開発以外の業務を委託する場合には、以下の2つのケースで下請法が適用されます。
下請法における親事業者の義務
下請法が適用される場合、親事業者には4種類の義務が課されます。内容は、
以下の通りです。
契約時、親事業者は下請け事業者に対し、契約に関する重要事項を記載した書面を交付する必要があります。
親事業者は、取引に関する重要な事項を記載した書面を作成し、保存する義務があります。
下請法における親事業者の禁止行為
また、親事業者が次のような行為をすることが禁じられます。
相場より不当に安い金額で買いたたいてはいけません。
親事業者のサービスや商品を購入させることや利用強制することが禁じられます。
親事業者が不正をしていることを、公正取引委員会などに通報されたことで、報復をすることは許されません。
下請法における違反の効果
公正取引委員会からの是正勧告と発表
それでは、親会社が下請法に違反した場合、どのようなペナルティを受けることになるのでしょうか?
この場合、まずは公正取引委員会から是正勧告を受けることになります。
具体的には、違反行為を辞めることと、同時に違反行為によって下請け事業者に発生した損害を填補することを指導されます。
ケースにもよりますが、親事業者が下請け事業者に支払うべき損害の填補額は、数億円に上るケースもあります。
また、公正取引委員会によって是正勧告を受けた場合には、違反した親事業者名や違反行為の内容が、公正取引委員会のホームページ上で公開されてしまいます。これにより、親会社の社会内での信用は大きく失われることになるでしょう。
罰則
下請法では罰則も定められています。
罰則が適用されるのは、以下の場合です。
上記の行為があったときには、親事業者の代表者や会社そのものに対し、50万円以下の罰金刑が科されます。
下請法における注意点まとめ
このように、IT業務でも下請法が適用される場面はたくさんあります。
親事業者に該当する場合、下請法違反にならないよう十分注意が必要です。
反対に、自社が下請け企業となり、不当な代金減額や支払拒絶、支払い遅延などに遭って困っているときには、公正取引委員会への通報も検討すると良いでしょう。