システム開発を外国企業に委託するオフショア開発。オフショア先の国として人気があった中国が経済発展を遂げたことにより人件費が高騰しました。そこで東南アジアの国々、特にベトナムがオフショアの主力として注目されるようになりました。
何故ベトナムがオフショア開発に強いのか、真相に迫ってみます。
若い力に溢れ、ソフトウェア業界に勢いがある
ベトナムの年齢別人口構成は日本と大きく違い、若年層がとても多いのです。年代別人口では20代がトップであり、ベトナムを訪れた人々はみな「若者が多い」と驚きを隠せません。
さらにベトナムでは2020年までに工業国としての体制を確立するという目標を抱えており、その中でソフトウェア産業は重要な分野として位置づけられています。日本のIT業界は若い頭脳が常に不足しており、業界への後押しも十分であるとは言えません。
このような日本の弱点をうまく補う形になっているのが、ベトナムという国なのです。
勤勉な国民性と、IT分野に頭脳が結集する構造
まずベトナムは日本人によく似た、非常に勤勉な国民性を持っています。特にベトナム北部ではその傾向が顕著で、終業後に語学や技術の勉強をする人々が多いことが特徴です。
IT分野の技術者は、日進月歩する技術についていったり他分野の知識を必要とされたりするため、自己学習は必須となります。日常的に向学心をもってスキルアップに励むベトナムのエンジニアは、低コストで高品質のシステムを開発するにあたり人気を集めているのです。
さらに、IT分野への就職事情も追い風となっています。ベトナムでは優秀な学生がIT分野への就職を希望することが多く、国内の優秀な頭脳がIT分野へ結集しているという構造があります。IT企業へ就職する人材の平均レベルは、おそらく日本よりも上でしょう。なぜならベトナムでは、コンピュータサイエンスや情報技術系の学部が大変人気であり、エンジニアの大半はこれらの理系学部を卒業しています。技術の基礎となる知識はすでに習得しているため、もともと適性のある人材がIT企業へと就職しています。
良好な対日感情と安定した国政状況
ベトナムはもともと親日国です。仏教が根付いているという共通した背景もあり、ベトナムでは日本を目標とする風潮があります。日本に対する尊敬と親しみという点では、アジアの国々の中でも随一です。個々人の感情は必ずしもこれと一致しているわけではありませんが、それでも中国やインドに比べて付き合いやすい国民性があると言えるでしょう。
また、長く一党独裁の政治が続いているせいもあり、国政は安定しています内乱や政治不安などの要素が極めて少なく、国政自体が事業のリスクとなるような心配がありません。このように安定した状況で、中長期的にシステムの開発計画を立てやすいことも、オフショア市場でベトナムが人気を集める理由の一つです。
圧倒的な価格競争力で市場優位性を保ちやすい
IT分野のシステム開発は年々コスト重視になり、技術者の単価を安く抑えて高品質なシステムを作り上げなければ生き残りは難しいのです。
かつてオフショア先として隆盛を誇ったインドや中国は、経済発展による人件費の高騰によりオフショア先として選定しにくくなりました。インドや中国には優秀な人材が大勢いるのですが、その人材を確保して管理するための費用が捻出できないというのが現状なのです。
一方ベトナムはまだまだ人件費が安く、ブリッジSEで月当たりの単価は30~40万円、プログラマーであれば20~25万円が相場です。中国やインドではこれらの約2倍近い単価です。
質を落とさずに価格だけを落とし、市場での競争力を維持したい日本企業がベトナムを選ぶ理由がここにあります。